コンピューターを使う工夫と使わない工夫

理学研究科物理学専攻
早川美徳

NHKの「サイエンスアイ」などの番組で、優れた研究や注目されている研究が紹介されるとき、研究者自身がコンピュータを操作している場面や、コンピューターを背景にしたインタビューをよく目にする。このことは、現代の研究のスタイルをある意味で象徴しているし、実際に(学生を含む)研究者がコンピュータを前にしてい時間は相当長いのではないかと思う。特に、物理学科ともなれば、電子メイルやデータ交換、情報や論文検索、実験装置の制御、データ解析、シミュレーション、リポートや論文の執筆、研究発表など、多くの場面でコンピューターのお世話になるし、逆に、コンピューターを世話しなければいけない機会もまた多い(困ったことに、忙しいときほどそうである)。ここでわざわざ述べるまでもなく、コンピューターの重要性については諸君もよく認識しているだろう。

入学すると、最初のセメスターには「情報基礎」という講義があって、コンピューターの基本的は使い方や利用上の注意事項などを学ぶ。引き続いて理学部では2セメスターに「情報理学入門」が開講されていて、C言語などによるプログラミングの基礎を実習形式で学ぶことができる。さらに物理系では「一般物理学実験」の中にもコンピューターの基礎教育が含まれており、3年になると情報理論や数値計算などの基礎についての講義(「情報理学」)もある。諸君が学部の間にコンピューターに接することを「強いられる」授業は、大体このくらいだ。

情報関係の授業を担当してみて思うのは、学生各々のコンピューターについての習熟度には大きな差があって、学年が進むとともに、それはさらに拡大していくように見えることだ。ここではパソコンに限定して話しを進めよう。今やパソコンはごくありふれた存在で、以前に比べれば値段も随分と安くなった。実際、授業で学生にアンケートを取ってみると、かなりの割合でパソコンを所有し、自宅からインターネットに接続できるケースも多い。ところが、その分パソコンに接する機会、あるいはパソコンを使って何かを学んだり作ったりする機会も増えているかと言えば、必ずしもそうではないようだ。

一般的に言って、今のパソコンはハードもソフトもまだ中途半端で使い勝手が悪い。その点、ゲーム機のほうがよほど完成度は高いと言える。多くの道具がそうであるように、パソコンを使いこなすにもある程度の訓練や勉強は必要なのだ。腕と経験が無ければどんなに良いカンナでも使いこなせないし、手入れさえままならないように。そして、そのことはこの先も変わらないだろう。

何事にも目標が必要だけれども、パソコンを学ぶにもそれなりの理由がほしい。それは、授業のリポート作成や、友人とのメイル交換かもしれないし、人によってはハードウェアやソフトウェアそのものに興味が湧くかもしれない。でも、その理由が感じられないうちは(友人達が持っているからと言って)無理にパソコンを購入したりせず、授業の勉強はもちろんのこととして、本を読んだり、色々な人と語らったりして、自分の興味の範囲を広げ、深めることがまず大切なのではないかと思う。「使い方」の習得に限って言えば、パソコンほどやり直しのきくものはない。ピアノやバイオリンは子供の頃から習えば上達が早いそうだけれども、パソコンは思い立ったときにいつでも始められる。そして、そのために必要な情報のほとんどはいつでもインターネットやおびただしい数の書籍から入手できる。

その理由が明らかになり、パソコンを購入することになったときのために、私からのアドバイス:

そして、最後のアドバイス: やがてパソコンやインターネットのある生活に慣れ、日常的にそれらに接するようになっても、たまには電源を落として、コンピューターの無い時間を楽しむことも大切だろうと思う。パソコンを使わない工夫も、使う工夫と同じくらい面白く有意義なはずだ。


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